Brighten up your day !!

少年探偵団

 江戸川乱歩著 出版:1937年

東京に現れた「黒い魔物」により次々と少女が誘拐されていく。少年探偵団と明智先生によって犯人を追いかけるのだが。。

江戸川乱歩の代表作。

9.地下室

0

お話かわって、地下室に投げこまれた小林君と緑ちゃんとは、まっくらやみの中で、しばらくは身動きをする勇気もなく、グッタリとしていましたが、やがて目が暗やみになれるにしたがって、うっすらとあたりのようすがわかってきました。それは畳六畳敷きほどの、ごくせまいコンクリートの穴ぐらでした。ふつうの住宅にこんなみょうな地下室があるはずはありませんから、インド人たちが、この洋館を買いいれて、悪事をはたらくために、こっそりこんなものをつくらせたのにちがいありません。壁や床のコンクリートも、気のせいか、まだかわいたばかりのように新しく感じられます。
 小林君は、やっと元気をとりもどして、やみの中に立ちあがっていましたが、ただジメジメしたコンクリートのにおいがするばかりで、どこに一つすきまもなく、逃げだす見こみなど、まったくないことがわかりました。
 思いだされるのは、いつかとやまがはらの二十面相の巣くつに乗りこんでいって、地下室にとじこめられたときのことです。あのときは、天井につごうのよい窓がありました。そのうえ七つ道具や、ハトのピッポちゃんを用意していましたので、うまくのがれることができたのですが、こんどは、そんな窓もなく、まさか敵の巣くつにとらわれようとは、夢にも思いませんので、七つ道具の用意さえありません。こんなとき、万年筆型の懐中電燈でもあったらと思うのですが、それも持っていませんでした。
 しかし、たとえ逃げだす見こみはなくとも、まんいちのばあいの用意に、からだの自由だけは得ておかねばなりません。
 そこで、小林君は、緑ちゃんのそばへうしろ向きによこたわり、少しばかり動く手先を利用して、緑ちゃんのくくわれているなわの結びめをほどこうとしました。
 暗やみの中の、不自由な手先だけの仕事ですから、その苦心は、ひととおりでなく、長い時をついやしましたけれど、それでもやっと、目的をはたして、緑ちゃんの両手を自由にすることができました。
 すると、たった五つの幼児ですが、ひじょうにかしこい緑ちゃんは、すぐ、小林君の気持を察して、まず、自分のさるぐつわをはずしてから、泣きじゃくりながらも、小林君のうしろにまわり、手さぐりで、そのなわの結びめをといてくれるのでした。
 それにも、また長いことかかりましたけれど、けっきょく、小林君も自由の身となり、さるぐつわをとって、ホッと息をつくことができました。
「緑ちゃん、ありがとう。かしこいねえ。泣くんじゃないよ。今にね、警察のおじさんが助けに来てくださるから、心配しなくてもいいんだよ。さあ、もっとこっちへいらっしゃい。」
 小林君はそういって、かわいい緑ちゃんを引きよせ、両手でギュッとだきしめてやるのでした。
 しばらくのあいだ、そうしているうちに、とつぜん、天井にあらあらしい靴音がして、ちょうど地下室への入り口あたりで立ちどまると、コトコトとみょうな物音がしはじめました。
 目をこらして、暗い天井を見あげていますと、はっきりとはわかりませんけれど、天井に小さな穴がひらいて、そこから何か太い管くだのようなものが、さしこまれているようすです。直径二十センチもある太い管です。
 おや、へんなことをするな、いったいあれはなんだろうと、ゆだんなく身がまえをして、なおもそこを見つめているうちに、ガガガ……というような音がしたかと思うと、とつじょとして、その太い管の口から、白いものが、しぶきをたてて、滝のように落ちはじめました。水です。水です。
 ああ、読者諸君、このときの小林君のおどろきは、どんなでしたろう。
 黒い怪物は、むごたらしくも、緑ちゃんと小林君とを、水責めにしようとしているのです。あのはげしさで落ちる水は、ほどもなく、たった六畳ほどの地下室に、すきまもなく満ちあふれてしまうにちがいありません。やがてふたりは、その水の中でできししなければならないのです。
 そういううちにも、水は地下室の床いちめんに、こうずいのように流れはじめました。もう、すわっているわけにはいきません。小林君は、緑ちゃんをだいて、水しぶきのかからぬすみのほうへ、身をさけました。
 水は、そうして立っている小林君の足をひたし、くるぶしをひたし、やがてじょじょに、じょじょに、ふくらはぎのほうへ、はいあがってくるのです。
 ちょうどそのころ、少年捜索隊の篠崎君と桂君の一組は、やっとのこと、インド人の自動車が通ったさびしい広っぱの近くへ、さしかかっていました。
 この道は、今までのうちで、いちばんさびしいから、念入りにしらべてみなければならないというので、べつだんの聞きこみもありませんでしたけれど、あきらめないで歩いていますと、夕やみの広っぱへはいろうとする少し手前のところで、駄菓子屋の店あかりの前を、七―八歳の男の子が、向こうからやってくるのに出あいました。
「おい、篠崎君、あの子どもの胸に光っている記章を見たまえ。なんだかぼくらのBDバッジに似ているじゃないか。」
 桂君のことばに、ふたりが、子どもに近づいてみますと、その胸にかけているのは、まごうかたもなく、少年探偵団のBDバッジでした。
 BDバッジというのは、小林君の発案で、ついこのあいだできあがったばかりの探偵団員の記章でした。BDというのは、Boy(少年)とDetective(探偵)のBとDとを模様のように組みあわせて、記章の図案にしたことから名づけられたのです。
「その記章、どこにあったの? どっかでひろいやしなかったの?」
 子どもをとらえてたずねてみますと、子どもは取りあげられはしないかと、警戒するふうで、
「ウン、あすこに落ちていたんだよ。ぼくんだよ。ぼくがひろったから、ぼくんだよ。」
 と、白い目でふたりをにらみました。
 子どもが、あすこでひろったと指さしたのは、広っぱのほうです。
「じゃ、小林さんが、わざと落としていったのかもしれないぜ。」
「ウン、そうらしいね。重大な手がかりだ。」
 ふたりは、勇みたってさけびました。
 小林少年が考案したBDバッジには、ただ、団員の記章というほかに、いろいろな用途があるのでした。まず第一は、重い鉛でできているので、ふだんから、それをたくさんポケットの中へ入れておけば、いざというときの石つぶてのかわりになる。第二には、敵にとらえられたばあいなどに、記章の裏のやわらかい鉛の面へ、ナイフで文字を書いて、窓や塀の外へ投げて、通信することができる。第三には、裏面の針にひもをむすんで、水の深さをはかったり、物の距離を測定することができる。第四には、敵に誘かいされたばあいに、道にこれをいくつも落としておけば、方角を知らせる目じるしになる。というように、小林君がならべたてたBDバッジの効能は、十ヵ条ほどもあったのです。
 団員たちは、ちょうどアメリカの刑事のように、このバッジを洋服の胸の内がわにつけて、何かのときには、そこをひらいてみせて、ぼくはこういうものだなどと、探偵きどりでじまんしていたのですが、その胸の記章のほかに、めいめいのポケットには、同じ記章が二十個から三十個ぐらいずつ、ちゃんと用意してあったのです。
 桂君と篠崎君とは、男の子が、そのBDバッジを広っぱの道路でひろったと聞くと、たちまち、今いった、第四の用途を思いだし、小林少年が捜索隊の道しるべとして、落としていったものと、さとりました。
 読者諸君は、もうとっくにおわかりでしょう。小林君が自動車の中で、インド人にしばられるとき、ソッとポケットからつかみだして、バンパーのつけねの上においた、百円銀貨のようなものは、このBDバッジにほかならなかったのです。そして、その小林君の目的は、いま、みごとに達せられたのです。
 篠崎、桂の二少年は、用意の万年筆型懐中電燈をとりだすと、男の子に教えられた地点へ走っていって、暗い地面を照らしながら、もうほかに記章は落ちていないかと、熱心にさがしはじめました。
「ああ、あった、あった。ここにも一つ落ちている。」
 懐中電燈の光の中に、新しい鉛の記章がキラキラとかがやいているのです。
「敵の自動車は、この道を通ったにちがいない。きみ、呼び子を吹いて、みんなを集めよう。」
 ふたりはポケットの七つ道具の中から、呼び子をとりだして、息をかぎりに吹きたてました。
 夜の空に、はげしい笛の音がひびきわたりますと、まださほど遠くへ行っていなかった残りの五人の少年が、彼らも呼び子で答えながら、どこからともなく、その場へ集まってきました。
「おい、みんな、この道にBDバッジが二つも落ちていたんだ。小林さんが落としていったものにちがいない。もっとさがせば、まだ見つかるかもしれない。みんなさがしてくれたまえ。そして、落ちているバッジをたどっていけば、犯人の巣くつをつきとめることができるんだ。」
 桂少年のさしずにしたがって、五人の少年も、それぞれ万年筆型懐中電燈をとりだして、いっせいに地面をさがしはじめました。そのさまは、まるで[#「まるで」は底本では「さるで」]七ひきのホタルが、やみの中をとびかわしているようです。
「あった、あった。こんなところに、泥まみれになっている。」
 ひとりの少年が、少し先のところで、また、一つのバッジをひろいあげてさけびました。これで三つです。
「うまい、うまい。もっと先へ進もう。ぼくらは、こうして、だんだん黒い怪物のほうへ近づいているんだぜ。さすがに小林さんは、うまいことを考えたなあ。」
 そして、七ひきのホタルは、やみの広っぱの中を、みるみる、向こうのほうへ遠ざかっていくのでした。

 地下室では、もう水が一メートルほどの深さになっていました。
 緑ちゃんをだいた小林君は、立っているのがやっとでした。水は胸の上まで、ヒタヒタとおしよせているのです。
 天井の管からの滝は、少しもかわらぬはげしさで、ぶきみな音をたてて、降りそそいでいます。
 緑ちゃんは、この地獄のような恐怖に、さいぜんから泣きさけんで、もう声も出ないほどです。
「こわくはない、こわくはない。にいちゃんがついているから、大じょうぶだよ。ぼくはね、泳ぎがうまいんだから、こんな水なんてちっともこわくはないんだよ。そして、今におまわりさんが、助けにいらっしゃるからね。いい子だから、ぼくにしっかりつかまっているんだよ。」
 しかし、そういううちにも、水かさはこくいっこくと増すばかり、小林君自身が、もう不安にたえられなくなってきました。それに、春とはいっても、水の中は身もこおるほどのつめたさです。
 ああ、ぼくは緑ちゃんといっしょに、この、だれも知らない地下室で、おぼれ死んでしまうのかしら。道へ探偵団のバッジを落としておいたけれど、もし団員があすこを通りかからなかったら、なんにもなりゃしないのだ。明智先生はどうしていらっしゃるかしら。こんなときに先生が東京にいてくださったら、まるで奇跡のようにあらわれて、ぼくらを救いだしてくださるにちがいないのだがなあ。
 そんなことを考えているうちにも、水は、もうのどのへんまでせまってきました。
 からだが水の中でフラフラして、立っているのも困難なのです。
 小林君は、緑ちゃんを背中にまわして、しっかりだきついているようにいいふくめ、いよいよつめたい水の中を泳ぎはじめました。せめて手足を動かすことによって寒さをわすれようとしたのです。
 でもこんなことが、いつまでつづくものでしょう。緑ちゃんという重い荷物をせおった小林君は、やがて力つきておぼれてしまうのではないでしょうか。いや、それよりも、もっと水かさが増して、天井いっぱいになってしまったら、どうするつもりでしょう。そうなれば、泳ごうにも泳げはしないのです。息をするすきもなくなってしまうのです。

0
  • 1. 黒い魔物

    0 そいつは全身、墨を塗ったような、おそろしくまっ黒なやつだということでした。 「黒い魔物」のうわさは、もう、東京中にひろがっていましたけれど、ふしぎにも、はっきり、そいつの正体を見きわめた人は、だれもありませんでした。…


  • 2. 怪物追跡

    0 やみと同じ色をした怪物が、東京都のそこここに姿をあらわして、やみの中で、白い歯をむいてケラケラ笑うという、うすきみの悪いうわさが、たちまち東京中にひろがり、新聞にも大きくのるようになりました。  年とった人たちは、き…


  • 3. 人さらい

    0 墓地のできごとがあってから二日の後、やっぱり夜の八時ごろ、篠崎始君のおうちの、りっぱなご門から、三十歳ぐらいの上品な婦人と、五つぐらいのかわいらしい洋装の女の子とが、出てきました。婦人は始君のおばさん、女の子は小さい…


  • 4. のろいの宝石

    0 さて、門の前に遊んでいた女の子がさらわれた、その夜のことです。篠崎始君のおとうさまは、ひじょうに心配そうなごようすで、顔色も青ざめて、おかあさまと始君とを、ソッと、奥の座敷へお呼びになりました。  始君は、おとうさま…


  • 5.黒い手

    0 そのとき、始君は何を見たのか、アッと小さいさけび声をたてて、おとうさまのうしろの床の間を見つめたまま、化石したようになってしまいました。その始君の顔といったらありませんでした。まっさおになってしまって、目がとびだすよ…


  • 6.ふたりのインド人

    0 さわぎのうちに一夜がすぎて、その翌日は、篠崎家の内外に、アリも通さぬ、げんじゅうな警戒がしかれました。緑ちゃんは、奥の一間にとじこめられ、障子をしめきって、おとうさま、おかあさまは、もちろん、ふたりの秘書、ばあやさん…


  • 7.銀色のメダル

    0 小林君は、まるでキツネにつままれたような気持でした。さいぜん、篠崎家の門前で、自動車に乗るときには、秘書も運転手も、たしかに白い日本人の顔でした。いくらなんでも、運転手がインド人とわかれば、小林君がそんな車に乗りこむ…


  • 8.少年捜索隊

    0 ちょうどそのころ、篠崎君のおうちの近くの、養源寺の門前を、六人の小学校上級生が、何か話しながら歩いていました。  先頭に立っているのは、篠崎君の親友の、よくふとった桂正一君です。桂君は、学校で篠崎君からこんどの事件の…


  • 9.地下室

    0 お話かわって、地下室に投げこまれた小林君と緑ちゃんとは、まっくらやみの中で、しばらくは身動きをする勇気もなく、グッタリとしていましたが、やがて目が暗やみになれるにしたがって、うっすらとあたりのようすがわかってきました…


  • 10.消えるインド人

    0 ちょうどそのころ、篠崎始君や、相撲選手の桂正一君や、羽柴壮二君などで組織された、七人の少年捜索隊は、早くもインド人の逃走した道すじを、発見していました。  それは小林君が、インド人に、かどわかされる道々、自動車の上か…


  • 11.四つのなぞ

    0 世田谷の洋館でインド人が消えうせた翌々日、探偵事件のために東北地方へ出張していた明智名探偵は、しゅびよく事件を解決して東京の事務所へ帰ってきました。  帰るとすぐ、探偵は旅のつかれを休めようともしないで、書斎に助手の…


  • 12.さかさの首

    0 明智探偵は、ふたりのインド人に部屋を貸していた洋館の主人春木氏に、一度会っていろいろきいてみたいというので、さっそく同氏に電話をかけて、つごうをたずねますと、昼間は少しさしつかえがあるから、夜七時ごろおいでくださいと…


  • 13.屋上の怪人

    0 明智探偵は何も知らずに話しつづけました。 「あべこべといいますのはね、この事件の犯人は、彼が見せかけようとしたり、広告したりしたのとは、まるで反対なものではないかということです。  つまり、犯人は黒いインド人ではなく…


  • 14.悪魔の昇天

    0 中村係長は怪盗が何をいおうと、そんな口あらそいには応じませんでした。賊はなんの意味もない、からいばりをしているのだと思ったからです。そこで、屋上の警官たちに、いよいよ最後の攻撃のさしずをしました。 それと同時に、十数…


  • 15.怪軽気球の最後

    0 「二十面相、空中にのがる」との報が伝わると、警視庁や各警察署はいうまでもなく、各新聞社の報道陣は、たちまち色めきだちました。 時をうつさず、警視庁首脳部の緊急会議がひらかれ、その結果、探照燈によって賊のゆくえをつきと…


  • 16.黄金の塔

    0 二十面相は、いよいよ正体をあらわしました。そして、これからは大っぴらに、怪盗二十面相として、例の宝石や美術品ばかりをねらう、ふしぎな魔術の泥棒をはじめようというわけです。  新聞によって、これを知った東京都民は、黒い…


  • 17.怪少女

    0 それと知った助手の小林少年は、気が気ではありません。どうかこんどこそ、先生の手で二十面相がとらえられますようにと、神さまに祈らんばかりです。 「先生、何かぼくにできることがありましたら、やらせてください。ぼく、こんど…


  • 18.奇妙なはかりごと

    0 「あと、もう三日しかないぞ。」 てのひらに書かれた予告の数字に、主人大鳥氏はすっかりおどかされてしまいました。 賊は黄金塔の部屋へ苦もなくしのびいったばかりか、ねむっている主人のてのひらに、筆で文字を書きさえしたので…


  • 19.天井の声

    0 もうこれで安心です。たとえ二十面相が予告どおりにやってきたとしても、黄金塔はまったく安全なのです。賊はとくいそうににせものをぬすみだしていくことでしょう。あの大泥棒をいっぱい食わせてやるなんて、じつにゆかいではありま…


  • 20.意外また意外

    0 姿のない声が、ほんものの黄金塔のかくし場所を知っていると言ったものですから、大鳥氏は、もう気が気でなく、三人の店員たちをたちさらせますと、門野支配人とふたりで、大急ぎで畳をあけ、床板をはずし、それから、支配人にそこの…


  • 21.きみが二十面相だ!

    0 大鳥氏はびっくりして、キョロキョロと部屋の中を見まわしました。しかし、賊の姿などどこにも見あたりません。 「ハハハ……、ごじょうだんを。ここにはわしたち四人のほかには、だれもいないじゃありませんか。」  いかにも、戸…


  • 22.逃走

    0 「ハハハ……、何もおどろくことはありませんよ。二十面相は土の下へ逃げたのです。」 明智小五郎は、少しもさわがず、あっけにとられている人々を見まわして、説明しました。「エッ、土の中へ? いったいそれはどういう意味です。…


  • 23.美術室の怪

    0 二十面相がドアをあけて、玄関のホールに立ちますと、その物音を聞きつけて、ひとりの部下が顔を出しました。頭の毛をモジャモジャにのばして、顔いちめんに無精ひげのはえた、きたならしい洋服男です。 「お帰りなさい……。大成功…


  • 24.大爆発

    0 二十面相は、十一体の仏像のピストルにかこまれ、明智探偵の監視をうけながら、もうあきらめはてたように美術室の中を、フラフラと歩きまわりました。 「ああ、せっかくの苦心も水のあわか。おれは何よりも、この美術品をうしなうの…


この作品は現在パブリックドメインのため、古典の本棚に掲載しております。